2010年9月10日

外科医の決断

グッピー会員の先生方、こんにちは。
9月に入り、来年度のご転職をお考えになられている先生方と一緒に、
病院の見学や面接に行く機会が増えており、毎日のように出張に出ているメガネです。

ここ最近のブログで話題にしておりましたような、中堅の先生方からの相談も多く入ります。
臨床と指導両方の責任と負担が圧し掛っている方や、医局の引き上げに伴い
自己のポジショニングへの不満や将来不安を抱いておられる方が多く見受けられます。
今回のブログは、少し前に私がお手伝いをさせて頂いた消化器外科の先生のお話を
交えながら、実際の転職事例のご紹介をしてみたいと思います。


転職を考えられる先生方には、当然ですがそれぞれに転職の理由があります。
100人のドクターがいれば、100通りの転職理由があるのですが、専門科目により
特徴的なものもございます。
例えば、今回ご紹介をする外科系の先生方からは、よく「外科は体力勝負である」という
お話を聞かせて頂くのですが、、肉体的に疲弊された先生からの悲鳴とも取れる
ご相談を受ける事もありますし、人間関係での精神的ストレスを訴えられる先生もおられます。


ご紹介をするこの事例の先生も、外科医としての体力の限界と、外科医としてのプライドの
狭間での葛藤から私にご相談をが入りました。

この先生は、50代半ばの消化器外科の先生なのですが、ご年齢を重ねるにつれ、
徐々に若手のドクターに手術をする機会をゆずるようになり、ご自身は内視鏡の検査を
こなしながら、その合間で麻酔をかけるという立場におられました。
そしてさらに、医局派遣で、ご自分よりずっと年齢も若く経験も浅いドクターが外科部長を
勤めるという病院に就任され、それまでと同じように内視鏡と手術麻酔を求められ、
メスを握ることがとうとうなくなってしまいました。

初めてメールでご連絡を頂いた私は、早速先生にメールでご挨拶をさせて頂いたのですが、
なにしろ、30年ほど医局派遣で勤務をされていた先生でしたから、私が何者であるかを理解し、
信用して頂くにも相当の時間を要した事を憶えております。

病院情報をお伝えしたり、先生のご意見を求めたりしても、なかなか先生の心の内を
お話して頂けませんでした。
私は、おそらくこの先生は、きっと自信を失いかけているのではないかと思い、
ただただ先生のプライドをお守りし、且つ体力的に負担がかからないご勤務を紹介する事に
専念をしておりました。

私からメールを送っても、先生からのお返事はたった1行だけ・・・
そんなやり取りを続ていたある日、突然、私の携帯が鳴りました。
なんと、この先生から。

「外科医として勤め上げたい。このまま終わるわけにはいかない」

どこか寂しげにお話される先生の声を聞きながら、私自身改めて自分の仕事の意義を
再認識させられました。

そこから、候補にしていた病院との交渉が一気に始まりました。
体力的に無理が利かなくなっていることも自覚されていらっしゃいましたので、
その点にも注力しながら毎日病院に交渉を続けておりました。


最終的に獲得に前向きな3つの病院から、それぞれ以下のようなオファー内容をもらいました。
①「消化器内科部長として内視鏡をしながら内科的診療をする勤務」
②「外科部長として、手術をメインにした勤務」
③「内視鏡を中心としながら若手の指導をする勤務」

それぞれに高い評価を頂き、熱烈なオファーでした。

この中の③のご提案があった病院が最終候補となり、そこからさらに勤務内容やポストに
ついての調整を続けました。

最終的に先生がご就任を決められたのは、これから内視鏡を伸ばしていきたいと考えていた
病院の消化器科のトップのポジションでした。

現在、その先生は、内視鏡を中心としたご勤務の傍ら、腕が鈍らないように
オペにも執刀さしておられます。
そして、この先生から学びたいという意欲のある若手のドクターの指導も精力的に行われ、
見事にご自身のプライドを守りつつ、得意とする内視鏡のご経験を発揮しておられます。


実に良い転職ができたと労いのお言葉も頂けましたが、成功の背景にはいくつかの
要因があります。

ひとつは、先生自身がご自分のことをしっかりと私に話して頂けたことです。
医師としての生き方、自分自身を取り巻く環境、ご家族を含めた現状をしっかりと
棚卸しされた上で、ここと言う時には優柔不断さがなく、ズバッとご意見を述べて頂き、
ご決断をして頂けました。

実は、転職理由や、ご希望が明確にならなければ、どれだけ病院情報をご覧になられても、
ピンと来ないものです。
この芯になるところがぶれてしまいますと、なかなか一歩を踏み出せずに、
貴重な1年が失われていきます。


もうひとつの要因は、タイミングでした。
ドクターの転職だけではなく、一般の社会人でもそうなのですが、求人募集があるということは、
当然、同じようにそれを見ているライバルも存在します。
「これだ」と感じる案件は、他の多くの人も「これだ」と考えるものです。
病院側とのタイミングも然りで、内視鏡を伸ばしたいという方針が定まった絶妙の時期で、
トップに相応しい先生を探しておられる最中だったのです。
逆に考えれば、イメージに近い求人情報があることは非常に幸運でもあるのです。
この先生も、もし、すでに消化器科のトップの座に別のドクターが座っていれば、
おそらくご就任には至らなかった事でしょうから、千載一遇と言うと大袈裟かも知れませんが、
まさにチャンスを逃さず、きっちりとものになさいました。

このようなお話をしますと、転職に対して慎重になられている先生方の中には、
焦燥感を感じられる方もいらっしゃるかも知れませんが、私は決してそのようなことを
お伝えしたいのではありません。
「芯」がぶれてはいけませんので、どうか焦らずじっくりとご検討なさってください。

ただし、私は自分にできる限りのお手伝いをしていますが、
最終的にご決断を下されるのは先生ご自身です。
「今ここ」という瞬間だけは、ご自身のご決断を信じて、その一歩を踏み出してください。


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